わが家の猫の糖尿病日記です。
ペットボトル一本
家の中には三か所、水飲み場がある。
エサ皿の隣、私のデスクの下、お風呂場。
猫はそれぞれ好きな場所で水を飲む。
その減り方がすご過ぎて、器を見るたびに落ち込んでしまう。
水は全部測る。飲んだ分を減らしてメモを取っている。
ある日はトータルで500㏄! ペットボトル1本分水を飲んだ。
そして、一日に何度もトイレに入って排尿をする。
一日合計8個のちっこ玉を片づけた日もある。
こんなに小さな身体で、飲んで出して、飲んで出して。
水を汲む時、トイレ掃除する時、いつも胸がつぶれそうだ。
多飲多尿のすさまじさ。
トイレの猫砂にあるかたまり。
そこにスコップを入れる。
以前ならボール状のかたまりが一日に1個。多くて2個。
今朝はもう3個もある。
ボールの形にもならず、シミのような形を作ったものだ。
スコップでトイレの底からすくいとるが、ゆるい粘土のようにベタベタとしてとても取りにくい。
薄い薄いおしっこだからだ。
ガリガリとプラスチックのスコップをあてて、はがし取る。
それを3個。朝から。
猫の体調の悪さをこのトイレ掃除で実感し、早朝から泣きたくなる。
ビニール袋の重量に愕然とする。
こんなに排尿したら腎臓や膀胱にだって負担だろうに…。
猫は、俗にいう「ヒ」の字、ぐったり横になる寝方をしていた。
高血糖でだるいのだろう。
ひたすらこんな風に横になり、痩せたお腹で呼吸している。
朝と夜、決まった時刻に決まった単位量のインスリンを注射し、決まった重さのエサを与える。
食欲はほとんどなく、お湯でふやかしたエサ、その味のついた水をぺちゃぺちゃと舐め、そしてまた大量の水を飲み……。
数日から一週間、このサイクルが続き、飼い主の私たちは生きた心地がしなかった。
そのぐったりぶりに、ああお別れが近いのか、と何度も泣いた。
ところが数日に1日、活発な日が現れた。
ぐるぐる歩き回り、にゃーにゃー鳴き、抱っこをせがみ、よく食べる。
相変わらずの多飲多尿だったけれど、一喜一憂する日が始まった。
その一喜は私たちの希望となり、二人と一匹はいつも一緒にいるようになる。